3日たっても余韻がさめない

すごいことなのに、あんまり日本では報道されないのが寂しいが、本当にすごいことには、数年後とか数十年後に社会が気づくのが日本では当たり前なので,こういうものなのかもしれない。自分の興奮をすこし文字にしておくことにした。専門家の記事はいくつかあるので、あまり意味ないかもしれないが、シロート的目線で記録しておくのも少しは意味あるかもしれない。

世界のなかで、3大自転車ロードレースといわれるジロデイタリアの第5ステージで新城幸也選手が3位に入賞した。スカパーのアンテナが昨冬の豪雪でポッキリと折れてしまい,ものぐさで未だに修理が完了していない。で、今年のジロはライブ観戦していなかったが、Twitterで新城の3位入賞を知った.

昨年の世界最高峰自転車ロードレース、ツールドフランスで5位入賞していたので、その時はそれほどびっくりしなかった。ちなみに、5位入賞の時のレース展開は、最終盤のカーブで集団落車(こけること)の影響があって、新城が最後のトップ争いに残った。これがレースとはいえ、ラッキーな面があったことは確か。

今回の3位を知って、YouTubeで検索してみるとすぐにみつかった。その動画を見ると、百何十キロという距離を3人で逃げきっている。ロードバイクに興味ない方には分かりにくいかもしれないが、誰か他の選手の後ろを走るのは、先頭を切って走るよりかなり楽ちんなんです。さらに大人数で集団を組むと、極端な話、集団中央部に居たら自転車をこがなくても前に進んでしまうぐらい。だから終盤にトップ争いをしたい選手は100人以上の集団走行するわけです(登りゴールは別)。まあ、ロードレースに限らず、寄らば大樹の陰的な方がらくちんなのはどの社会でもおなじですね。

「逃げ」というのは、そんな集団の力を借りず、一人もしくは数名で集団よりも先にゴールすることを目指すことなのですが、もちろん集団にいるよりもずっと疲れるわけで、ほとんどの場合、ゴール直前に集団に吸収されてしまい、結局100位ぐらいでおわります。ばかばかしい行為にも見えますね。いろんな思惑があって「逃げる」のですが、簡単にいえば、自分の力を信じて逃げ切る可能性に賭けるわけです。テレビの画面にはよく写りますが、かなりチャレンジングな行為です。

その逃げに新城が入っていただけでもすごいことなのに、実はその逃げ自体を作ったのも新城だった。しかも単独で。だれも追いかけて来てくれなかったら、単独で逃げ切るつもりだったんだろうか?そんなの、ひとりで太平洋を泳いで渡ろうとするような行為ですよ。

結局3人の選手が新城に追いついて、4人で逃げつづけたわけです。集団の方は交代で先頭をつとめれば、逃げ集団よりも速いので簡単に逃げを捕まえられるんですが、無理して捕まえなくても終盤に捕まえれば充分なので一旦逃げができてしまえば、中盤はそれほど大きな展開は起こらないのがロードレースのようです。

ここからが、新城の真骨頂。最終盤に集団に捕まれば普通の逃げなのですが、最後の1.2kmになってもまだ集団に追いつかれない。その差50mも無かったでしょうね。世界に名の轟いた高速選手たちが100人以上かかって新城を含めた3人を追い詰めるわけです。その映像は自転車ロードレースを見たこと無いひとが、何のことだかわからず突然見たとしても、緊迫した迫力を感じることでしょう。3人対100人以上の戦いですから。日本の時代劇のエンディングによくでてくる一人で数十人と戦う浪人侍を想像してしまいます。相手は100人以上だから、それよりすごいってことか。

侍で思いましたが、サッカーの日本代表のことを「侍ジャパン」とかいってもてはやしていますが、残念ながら、あのサッカーをみて、わたしは全然「侍」を感じません。けなすわけではありませんが、個人的感想ということでご容赦ください。

話がそれてしまいましたが,新城です。なんと残り1.2kmでアタックしました。要するに思いっきり自転車をコイだわけです。ロードレースに詳しいかたなら、おいおいやめとけと思ったでしょうか?わたしも「え〜!こっからロングスパート決めるつもり?」とビックリしましたね。あまり詳しくない方はママチャリで1.2km全力ダッシュを想像してみてください。実際公道でやったらかなり危ないですよ。時速60kmぐらいです。普段トレーニングしてない人間がやったらリバースして意識を失うでしょう(笑)

要するにそのなに距離を残して、スパートしたら、途中で疲れてあとの2人に先にゴールされることは当然本人にも分かっているわけです。新城の目的は「逃げ切りたかった」。本人もあとからそのようにコメントしています。もちろんトップでゴールすることが「一番いい」のですが、それをすててでも集団に捕まらず最後まで新城選手は自分の力で局面を打開したんです。

だれもがみとめていますが、残り1.2kmでの新城のアタックがなかったら、逃げグループの3人は、3人とも集団に負けて100位ぐらいで終わっていたでしょう。新城以外の残りの2人は、もうアタックする力が残っていなかったか、もうダメだと諦めていたか、あるいは、自分以外の2人のうち誰かが最後に引っ張ってくれるのをお互いに待っていたのか。この3番目の場合を牽制と呼んでいるようです。先にも触れましたが、この切羽詰まった状態で3人が牽制しあっていたら、3人とも大集団に飲み込まれて、100km以上の距離を逃げてきた努力が水泡に帰していたことでしょう。

負け戦のときに、敵の大軍から敗走するのはものすごく大変なことだと聞きます。もちろん戦自体がたいへんなことには違いないのですが、そんなときに追い詰めてくる敵の大軍を防ぎながら味方を逃すのが「しんがり」の役目です。新城は、最後の1.2kmの局面で追い詰められ、先頭を切って走ることで自らしんがりを買って出たと言えるでしょう。自分は大軍に飲み込まれるかもしれないのを承知の上で。

これを「侍魂」と呼ばずして誰を侍とよぶのか。
昨年のツールドフランスを新城選手と別府(史)選手が完走したとき、どこかのテレビが「侍たちのツール」とかいう番組を作って特集していましたね。あのときの別府選手のパリでの逃げにも痺れました。でもあのときには、サッカーの「侍ジャパン」も思い出して,「なんでも侍つければいいってもんじゃないだろ、なんか軽々しいな」と思った。

しかし、今回は自分も新城選手のことを「侍魂の持ち主」と呼ぶことに激しく同意である。
本人は迷惑かもしれませんが(笑)
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Commented by Hypocrite at 2010-05-17 22:50 x
はじめまして
2年前の初観戦のツールド北海道で新城選手にポストカードを手渡ししてもらい、嬉かったのを覚えてますが、まさかこんなに出世するとは思いませんでした。
日本ではマイナースポーツですがヨーロッパではとてもメジャーなスポーツだということも自転車乗ってから気づいたわけで、それで日本人のことを嘆くのも違うと思いますが、もっと各メディアから賞賛があっても良いような気がします。
もっと人気が出れば、複雑な見方ができるスポーツは日本人向きなような気がします。
ほかの方のブログでは「逆に3位でよかった。これで1位2位との選手達と強い絆ができる」、「今後はもっと期待できるかも」的な事も書かれていたので感心しました。
本当に常連で表彰台に絡むようになったら、みんなでお酒飲みながらジャージ着てパブリックビューイングなんかできたらかなり熱く観戦できそうです。

ちなみに、”百人隊長”ってあのローマ軍団の百人隊長ですか?
Commented by aero_boy at 2010-05-17 23:38
Hypocriteさん、こんばんは。
日本では、なぜか自転車競技=競輪という構図が出来ちゃってますが、ロードレースは観てもやっても日本人向きだなと以前から私も思っています.微妙な駆け引きや心理戦みたいなのは、苦手かもしれませんが。
さらに言えば、MTBは山がちな国土、小柄で俊敏な身体、持久力など日本人が強くなる要素が揃っていると思うのですが、なぜかマイナーなのが不思議なんです。

百人隊長はもちろんローマ軍のそれです。自転車メーカーのcenturionに子供が乗っているので、ブログ名いただきました。
Commented by Hypocrite at 2010-05-18 00:20 x
たぶん、「いい大人が自転車乗っちゃってもう」みたいなイメージがいつのころからかできちゃったんだと思います。高校生のママチャリには一体感の安心感なのか盗難防止なのかわかりませんが国民配給制度的なものに見えます。

centurion=百人隊長なんですね
当方ローマ史が好きで百人隊長ばかりに目が行ってました。
Commented by aero_boy at 2010-05-19 12:24
大人だからこそ、自転車に乗るっていう文化がはやく根づいてほしいものですね。

私も高校生時代は、ママチャリを自転車屋で5000円で買い、3年間ほとんどメンテや修理らしきこともせず、雨の日も毎日通学などに使いました。今思い出すとすごい乗り物ですね。

ほとんど河川敷のサイクリングロードみたいなところを通学していましたが、たまに、右側通行したり平気でしてましたね。自転車は車両だという意識は相当低かったですね。
Commented by bandani at 2010-05-20 22:09 x
新城選手の走り、何度見ても素晴らしすぎます・・・
あのラスト1キロのスパート、あのスパートがなかったら先頭3人は全員飲まれていましたよね・・・
優勝したのはQUICK STEPの選手だったとしても、あの日、1番輝いていたのは新城選手で間違いないです・・・・・
ブラーボ新城!!
Commented by aero_boy at 2010-05-21 09:30
優勝したのは、確か、Quick Stepのピノーだったとおもいます。あれで、名前覚えました。第11ステージでも、終盤先頭に飛び出したりしてました。でもすぐ集団に飲まれていましたね。あまり粘らないタイプなのかもしれませんね。
by aero_boy | 2010-05-17 17:43 | レースを楽しむ | Trackback | Comments(6)

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